高等先鋭研究院・異分野基礎科学研究所の沈建仁所長・教授が「小林賞」の受賞者に決定!

2025年02月03日

 本学の高等先鋭研究院を構成する機関のひとつである異分野基礎科学研究所の沈建仁所長・教授が公益財団法人小林財団の「第6回(令和6年度)小林賞」[New window]の受賞者に決定しました。
 同賞は、医学や薬学、農学、工学、理学などの生命科学に関する諸分野において、独創的な研究を行い、顕著な成果を挙げ、さらにその後も当該研究分野の発展が期待される国内の研究者を対象に授与される賞で、2019年から実施されています。
 今回、沈所長は「光化学系複合体の構造生物学的研究を中心とした一連の光合成に関する研究」により受賞となりました。沈所長はこれまで、X線結晶解析によりシアノバクテリアから分離した光化学系II(photosystem II, PSII)複合体の高分解能構造を解析し、水分解・酸素発生反応の触媒として中心的な役割を果たすマンガン・カルシウム(Mn4CaO5)クラスターの構造を明らかにするとともに、X線自由電子レーザー(SACLA)[New window]を用いて、この触媒中心の正確な構造や光照射に応じて起きる一連の構造変化を明らかにし、水分解・酸素発生反応機構の解明に多大な貢献をしました。さらに、光化学系と集光性アンテナタンパク質からなる巨大複合体における光エネルギーの高効率捕集・伝達機構を、クライオ電子顕微鏡を用いて解明しました。これら一連の研究業績は、天然光合成の機構解明の基礎を作っただけでなく、人類の夢のエネルギーでもある「人工光合成」における人工触媒の合成に重要な指針を与える国際的に卓越した研究であることが評価され、今回の受賞決定となりました。
 受賞決定を受けて沈所長は、「これまでSACLAやクライオ電子顕微鏡を用いて、光化学系IIやそれとアンテナ色素タンパク質との超分子複合体の構造解析を行ってきており、それらの成果が評価されたことは大変喜ばしいことです。これまでの多くの共同研究者等に感謝するとともに、今後も一層の成果を輩出するよう努力していきます」と喜びを述べました。
 また本学の那須保友学長は「栄えある小林賞に沈所長・教授が決定したこと、本学として大変嬉しく感じています。本学の強みある基礎研究において、沈所長の光合成研究は『世界と伍する』という域ではなく、『世界を先導する』という域の研究活動、そして成果を出し続けています。そして何よりも沈所長を中心に優秀な若手研究者などの研究群の層の厚みが増しています。この研究形成は本学のみならず、わが国に研究環境において非常によい事例とも言えます。今回の小林賞の受賞決定で、さらなる研究活動、ならびに研究形成に弾みがつくように、大学としてもしっかりと支援していきたいと思います」とコメントしました。
 本学では、2023年12月22日に文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」(実施主体:日本学術振興会)の採択を受けて、岡山大学長期ビジョン2050「地域と地球の未来を共創し、世界の革新に寄与する研究大学」の実現を強力に推進しています。その取り組みのひとつに沈所長が拠点長を務める高等先鋭研究院先鋭研究群(研究特区)「植物・光エネルギー開発拠点」があり、社会変革を成すための研究活動を戦略的に実施しています。今後も、沈所長と地域中核・特色ある研究大学:岡山大学の絶え間ない挑戦にご期待ください。
 なお、受賞式は2月27日に大阪市内において開催される予定です。

<参考:沈所長・教授のこれまでの主な受賞等>
沈建仁教授が「朝日賞」受賞
田中エグゼクティブアドバイザー、沈教授が山陽新聞賞受賞
異分野基礎科学研究所の沈建仁教授が日本結晶学会2016年度学会賞 西川賞を受賞
沈副所長・教授が「平成29年(第11回)みどりの学術賞」受賞
異分野基礎科学研究所の沈副所長・教授が「三木記念賞」を受賞
沈副所長・教授が日本植物学会の学術賞を受賞
異分野基礎科学研究所の沈教授が、スウェーデン王立科学アカデミーより「グレゴリー・アミノフ賞」を受賞
異分野基礎科学研究所の沈教授が、令和2年秋の紫綬褒章を受章
異分野基礎科学研究所の沈建仁副所長・教授が日本植物生理学会賞を受賞
馬建鋒教授、山地直樹准教授、沈建仁教授が2021年版の「世界で最も影響力のある科学者」に選出
高等先鋭研究院・異分野基礎科学研究所の沈建仁所長・教授が「東レ科学技術賞」を受賞~光合成研究で世界を先導し、より良い社会変革を拓く~

<参考>
文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
岡山大学高等先鋭研究院に先鋭研究群(研究特区)として「植物・光エネルギー開発拠点」を認定~わが国屈指の国際競争力を有する研究拠点が研究の卓越性と地球と生態系の健康(Planetary Health)を実現へ~
岡山大学高等先鋭研究院先鋭研究群「植物・光エネルギー開発拠点」キックオフミーティングを開催

【本件問い合わせ先】
岡山大学異分野基礎科学研究所 所長・教授 沈建仁
TEL:086-251-8502
E-mail:shen◎okayama-u.ac.jp
    ※@を◎に置き換えています。

「第6回(令和6年度)小林賞」の受賞が決定した沈所長・教授
沈教授が所長を務める異分野基礎科学研究所
(岡山大学津島キャンパス)


異分野基礎科学研究所の仁科教授が「2024年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)」に採択!

2024年10月25日

 9月17日付で、本学異分野基礎科学研究所の仁科勇太教授が代表を務める研究課題「未利用有機物の“炭素化” 資源循環のためのマルチナリーカーボンの創出」が、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「2024年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)」に採択されました。
 今回採択された研究領域は、「材料創製および循環プロセスの革新的融合基盤技術の創出とその学理構築」(研究総括:東北大学 岡部朋永教授)であり、同領域は環境問題と資源問題に対処するために、持続可能な材料創製と資源循環プロセスの融合を目指しています。この領域における仁科教授の研究は、未利用の有機物を活用し、さまざまな炭素化プロセスを通じて新素材「マルチナリーカーボン」を創出することを目的としています。
 仁科教授の研究チームは、低温炭素化、高温炭素化、触媒炭素化といった多様なアプローチを用いて、材料の高効率な炭素化を実現することを目指します。また、本学に加えて、産業技術総合研究所、東北大学、大阪大学との連携により、分子レベルでのメカニズム解析や、炭素の構造と機能を高精度に解析することで、マルチナリーカーボンの実用化に向けた研究を推進します。
 本研究は、2024年10月から5年半にわたって行われる予定で、資源循環型社会の実現に貢献するための基礎理論の構築とその国際発信が期待されています。

代表を務める仁科教授
本研究の全体像

<参考>
2024年度戦略的創造研究推進事業(CREST)新規採択課題

【本件に問い合わせ先】
異分野基礎科学研究所
教授 仁科勇太
TEL:086-251-8718


異分野基礎科学研究所の吉村教授が「2024年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)」に採択!

2024年10月22日

 9月17日付で、異分野基礎科学研究所の吉村浩司教授が代表を務める研究課題「原子核時計が切り拓く時空計測フロンティア」が国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「2024年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)」の新規研究課題に採択されました。
 今回採択された研究領域は、「量子・古典の異分野融合による共創型フロンティアの開拓」(研究総括:井元信之・東京大学 特命教授室 特任教授)で、2023年度に設置されました。同研究領域は、量子コンピュータ・量子通信・量子センサー等の量子情報技術を単独または組み合わせて、ハードを造る・システム化する・ソルバーとして使う・ソフトを開発する・新しい使い方を開拓するにあたり、他の分野(素粒子・宇宙、物性物理、化学、材料工学、電気電子、情報処理、機械工学、計算科学、最適制御、AI、基礎数理など)の既存成果や考え方を積極的に取り入れたり、逆にこれらの分野に共創的に融合したりして分野の変化をもたらすことにより、新たな「量子フロンティア」の開拓を目指すものです。
 吉村教授の研究は、2024年10月から2030年3月の5年半にわたって行われ、レーザー励起が可能な唯一の原子核トリウム229を用いて、超高精度な「原子核時計」の実現を目指します。ここでは、固体原子核時計とイオントラップ原子核時計という2つの方式の原子核時計を、国内の幅広い分野の研究力を結集・融合することで開発し、その応用を目指します。
 同事業は、国が定める戦略目標の達成に向けて、課題達成型基礎研究を推進し、科学技術イノベーションを生み出す、革新的技術シーズを創出するためのチーム型研究です。今回の課題では理化学研究所、大阪大学とチームを組み、本事業の採択を起爆剤として、原子核時計という新しい量子計測技術を確立し、革新的な応用を創出します。

代表を務める吉村教授
トリウム229を用いた原子核時計の概念図

<参考>
2024年度戦略的創造研究推進事業(CREST)新規採択課題[PDF][New window]

【本件問い合わせ先】
異分野基礎科学研究所
教授 吉村 浩司
TEL:086-251-8499


異分野基礎科学研究所の高橋大地特別研究員が日本生物物理学会中国四国支部大会において、若手発表最優秀賞を受賞!

異分野基礎科学研究所 高橋大地特別研究員が第15回日本生物物理学会中国四国支部大会において、若手発表最優秀賞を受賞しました。
同賞は第15回日本生物物理学会中国四国支部大会の若手部門において最も優秀な発表をした1人に授与されるものです。この度、高橋特別研究員の、スピロプラズマの遊泳運動を駆動する細菌アクチンMreBに関する研究発表が評価され、同賞の受賞に至りました。
受賞を受けて高橋特別研究員は、「この度は栄誉ある賞をいただき大変光栄です。今後とも本会の発展に努めてまいりたいと思います。」とコメントしています。


異分野基礎科学研究所とイタリア・ナポリ大学が国際ワークショップ(Workshop on physics and electronics of 2D doped materials)を開催

岡山大学異分野基礎科学研究所とイタリア・ナポリ大学では、蓼科東急ホテルで国際ワークショップ(Workshop on physics and electronics of 2D doped materials)を開催します。

国際ワークショップ(Workshop on physics and electronics of 2D doped materials)

日本とイタリアの研究者を中心に、2次元層状物質を基礎とした物性物理学ならびにデバイス物理学の最先端の研究についての研究報告と議論を行います。


異分野基礎科学研究所の仁科教授が文部科学大臣表彰を受賞!

2024年04月18日

 科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を顕彰する文部科学省の「令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」の受賞者が決まり、若手科学者賞に本学異分野基礎科学研究所の仁科勇太教授が選ばれました。4月17日、文部科学省(東京都千代田区)で表彰式が行われました。
 仁科教授は「黒鉛の二次元材料化および機能開拓に関する研究」の業績が評価され受賞。黒鉛から得られる二次元炭素材料は、化学・物理・生物・医学など、幅広い分野において研究が行われています。しかしその合成においては、構造や物性の再現性が極めて低く量産化が困難という問題がありました。仁科教授は、この問題を解決するために、放射光施設等を利用する新たな分析手法を検討し、黒鉛から二次元材料を作製するメカニズムを解明し、再現性良くキログラムスケールでの製造を実証しました。また、二次元炭素材料の新機能を創出するために、化学修飾による新素材開発を行い、バイオマテリアル、電極材料、吸着材、触媒などへの応用を達成しました。
 今回の受賞を受け仁科教授は、「受賞対象となった研究は、私が研究者として独立してから新たに開始したものです。国内外・産学界の多くの方と議論し、築き上げてきた成果がこのような形で認められたことは、大変嬉しく思います。自分の研究にさらに磨きをかけるとともに、これまでの経験をより若い世代の研究者と共有し、岡山大学の研究者が世界のトップクラスに肩を並べられるよう切磋琢磨していきたいと思います」と喜びと今後の抱負を述べました。
 本学は、2023年12月に文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」(実施主体:日本学術振興会)に採択され、研究力強化に向けた取り組みを進めています。仁科教授をはじめとする優れた若手研究者への支援を加速し、最先端の研究成果をより迅速・効果的に社会に届けられるよう積極的に推進していきます。

【本件問い合わせ先】
異分野基礎科学研究所
教授 仁科勇太
TEL:086-251-8718
研究室HP

表彰状を手にする仁科教授
会場での記念写真