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世界最強クラスの磁場により強相関絶縁体の金属化を発見

東京大学
岡山大学

 東京大学物性研究所の松田康弘准教授らは、岡山大学異分野基礎科学研究所の村岡祐治准教授らと協力し、タングステン(W)を僅かに添加した二酸化バナジウム(VO2 : W 6%)が、世界最強クラスの磁場500テスラにおいて絶縁体から金属に変化することを発見しました。VO2は低温の絶縁体状態から約67℃で金属に相転移するため、スイッチやセンサーへの応用が期待されている機能性材料の1つです。しかし、強い電子相関のため、その絶縁体金属転移のメカニズムは発見から60年以上経った現在も十分理解できていませんでした。
 今回、スピンが絶縁体金属転移に本質的な役割を果たしている直接的証拠を発見し、相転移機構における主要因がバナジウム原子間の分子軌道形成であることが明らかとなりました。これは、今後実現が期待されるスピン制御スイッチング素子などの室温動作する量子機能デバイスの開発に大きく貢献する成果です。
 本成果は7月17日付Nature Communicationsに掲載されました。

◆発表のポイント

  • タングステン(W)を添加した二酸化バナジウム(VO2)が磁場中で強相関絶縁体から金属になることを発見しました。
  • 世界最強クラスの磁場を用いることで強相関電子の絶縁性がスピンにより制御できることを証明しました。
  • この発見は、強相関電子を用いた量子機能デバイス開発研究に新しい展開をもたらすと期待されます。
図1.V1-xWxO2 (x = 0.06)薄膜(膜厚15ナノメートル、TiO2基板)のレーザー波長1.977 μmでの光透過強度の磁場依存性。

図2.V1-xWxO2 ( x = 0, 0.036, 0.06)薄膜における、吸収係数αの相対変化量の磁場依存性。

図3.観測された磁場による金属化を説明する分子軌道崩壊の模式図。
■論文情報
論 文 名:Magnetic-field-induced insulator-metal transition in W-doped VO2 at 500 T
掲 載 紙:Nature Communications
著  者:Yasuhiro H. Matsuda*, Daisuke Nakamura, Akihiko Ikeda, Shojiro Takeyama, Yuki Suga, Hayato Nakahara, and Yuji Muraoka
D O I:10.1038/s41467-020-17416-w

<お問い合わせ>
岡山大学異分野基礎科学研究所
准教授 村岡 祐治(むらおか ゆうじ)
(電話番号)086-251-7898

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