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高等先鋭研究院・異分野基礎科学研究所の沈建仁所長・教授が「東レ科学技術賞」の受賞者に決定!

2024年02月16日

2月16日、本学の高等先鋭研究院を構成する機関のひとつである異分野基礎科学研究所の沈建仁所長・教授が公益財団法人東レ科学振興会「第64回(令和5年度)東レ科学技術賞」[New window]の受賞者に決定しました。
 本賞は、理学・工学・農学・薬学・医学(除・臨床医学)の分野で、学術上の業績が顕著な者、学術上重要な発見をした者や効果が大きい重要な発明をした者、あるいは技術上重要な問題を解決して技術の進歩に大きく貢献した者に対して授与される賞で、1960年から実施されています。これまでにノーベル賞受賞者の江崎玲於奈博士や野依良治博士、赤﨑勇博士ら我が国の科学技術を牽引してきた第一人者が受賞しています。
 今回、沈教授は「光合成における水分解反応及び光エネルギーの高効率利用機構」の解明により受賞となりました。沈教授はこれまで、X線結晶解析によりシアノバクテリアから分離した光化学系II(photosystem II, PSII)複合体の高分解能構造を解析し、水分解・酸素発生反応の触媒として中心的な役割を果たすマンガン・カルシウム(Mn4CaO5)クラスターの構造を明らかにしました。また、X線自由電子レーザー(SACLA)[New window]を用いて、この触媒中心の正確な構造や光照射に応じて起きる一連の構造変化を明らかにし、水分解・酸素発生反応機構の解明に多大な貢献をしました。
 さらに、この複合体へ光エネルギーを高効率に捕集・供給するアンテナタンパク質を含む巨大な複合体の構造も解明。これら一連の研究業績は、天然光合成の機構解明の基礎を作っただけでなく、人類の夢のエネルギーでもある「人工光合成」における人工触媒の合成に重要な指針を与える国際的に卓越した研究であることが評価され、今回の受賞決定となりました。
 受賞決定を受けて沈教授は「これまでSACLAやクライオ電子顕微鏡を用いて、光化学系IIやそれとアンテナ色素タンパク質との超分子複合体の構造解析を行ってきており、それらの成果が評価されたことは大変喜ばしいことです。これまでの多くの共同研究者等に感謝するとともに、今後も一層の成果を出すよう努力したいと考えています」と喜びを述べました。
 また本学の那須保友学長は「我が国の科学技術分野における極めて重要な賞を沈教授が受賞することになったこと、大変嬉しく感じています。沈教授らの研究は世界を牽引する最先端の研究であるとともに、私たちの生活を一変する社会変革をもたらすものでもあります。夢があり、ワクワク・ドキドキする研究を本学から世界に発信し続けられるように沈教授をはじめ、本学の研究者らを盛り上げていきたいと思います。また次世代研究者を担う大学院生や若手研究者らも沈教授の後に続くような秀逸な研究者、技術者に育成できるように全学を挙げて戦略的に進めていきたいと思います」とコメントしました。
 本学は、岡山大学長期ビジョン2050「地域と地球の未来を共創し、世界の革新に寄与する研究大学」の実現に向け、さらに昨年に採択を受けた文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」(実施主体:日本学術振興会)の取り組み等を加速し、社会変革を実現させるために大学法人一体となって地域社会とともに強力に推進しています。今回の受賞決定した成果の一部はJ-PEAKSの取り組みでもあり、今後の我が国の研究大学群の発展にも大きく貢献するものです。今後も、沈教授と地域中核・特色ある研究大学:岡山大学の絶え間ない挑戦にご期待ください。
 なお、本受賞セレモニーは3月18日に東京都内において開催される予定です。

<参考:沈教授のこれまでの主な受賞>
沈建仁教授が「朝日賞」受賞
田中エグゼクティブアドバイザー、沈教授が山陽新聞賞受賞
異分野基礎科学研究所の沈建仁教授が日本結晶学会2016年度学会賞 西川賞を受賞
沈副所長・教授が「平成29年(第11回)みどりの学術賞」受賞
異分野基礎科学研究所の沈副所長・教授が「三木記念賞」を受賞
沈副所長・教授が日本植物学会の学術賞を受賞
異分野基礎科学研究所の沈教授が、スウェーデン王立科学アカデミーより「グレゴリー・アミノフ賞」を受賞
異分野基礎科学研究所の沈教授が、令和2年秋の紫綬褒章を受章
異分野基礎科学研究所の沈建仁副所長・教授が日本植物生理学会賞を受賞
馬建鋒教授、山地直樹准教授、沈建仁教授が2021年版の「世界で最も影響力のある科学者」に選出

<参考>
文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
クライオ電子顕微鏡を中四国地域に初導入!
光合成を担う“ゆがんだイス”型の触媒が、水分子を取り込む瞬間をナノ秒レベルで捉えることに成功!~人工光合成の実現へ大きな一歩~

【本件問い合わせ先】
岡山大学異分野基礎科学研究所 所長・教授 沈建仁
TEL:086-251-8502
E-mail:shen◎okayama-u.ac.jp
   ※@を◎に置き換えています。

沈教授が所長を務める異分野基礎科学研究所(岡山大学津島キャンパス)


異分野基礎科学研究所に設置されているクライオ電子顕微鏡「KriosG4」(300 kV, サーモフィッシャ社)


光化学系IIの全体構造。全20個のタンパク質からなる複合体が2つ集合して1つの構造をとり、水分子から水素イオン(H+)と電子(e-)を取り出して酸素分子を形成する反応を触媒する。赤丸で囲んだ部分に反応を進行させる触媒があり、これは右側に拡大するようにゆがんだイス型のマンガンクラスターである。

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